MBAには戦略という課目がありますが、この課目はMBAの中でも特に重要なコアとなる課目であり、内容も他の課目に比べてより難しいものとなっています。

当校のPGD課程には、「Strategic Direction」と「Strategic Planning」という戦略に重きをおいた2つの課目があり、これらを通してビジネスにおける戦略とはどのようなものかを深く学ぶことが出来ます。

戦略の語源と定義

戦略 “Strategy”とは、もともとギリシャ語を語源とする軍事用語が語源でしたが、これが転じて現代では企業戦略のようにビジネスの世界でも用いられるようになりました。MBAにおけるビジネス戦略を考えるにあたり、この「戦略」という言葉そのものが軍事用語であったということには大きな意味があります。戦略は次のように定義されています。

戦略とは、不確実な条件下で1つ以上の長期的、または全体的な目標を達成するための総合的な計画である。

Freedman, Lawrence (2013). Strategy. Oxford University Press

このような定義から、戦略とは絶対正解の無い状況下にあって長期的な視点から考えなければならないものであることが理解できるかと思います。また同書では戦略とは「軍事戦術、包囲戦、兵站学などを含むスキルのいくつかのサブセットを含む総合的な術である」とも述べています。つまり戦略とは、戦争において勝利するための単一の何らかの手法ではなく、様々な諸要素が関係する複合的な分野を、総合的に考えて判断するための方法であると言うこともできるでしょう。

こうしたことから考えると、MBAの戦略課目の定義は、「絶対正解の無い状況下にあって、長期的視野と複合思考によって、特定の目的を達成するためにリソースを総合的に運用する技術・応用科学」だということができるでしょう。

戦略と戦術

日本人は戦略的に物事を捉えることが、欧米人に比べて苦手です。なぜなら日本人は、戦術と戦略を一緒にして考えてしまっていることが多いからです。実際に国語辞典を引いてみても、戦略の定義は欧米の辞書や書物と比べると、どちらかと言うと戦術寄りの意味で説明されています。しかし実際には戦略と戦術は大きく異なるものです。

例えば第二次世界大戦で日本はアメリカに敗北してしまいましたが、ある研究者はこの戦争を「日本は戦術に勝っていたが、戦略で劣っていた」と分析しています。日本は真珠湾攻撃など、特定の場面における局所的な戦術においてはアメリカに勝ったのかもしれませんが、戦争戦略という観点から見ると、長期的視点から勝利を収めるためのマネジメントやリソースの保有量が欠如しており、それが敗北という結果となりました。

戦争においては、ある特定の局面で勝利する戦術だけでは不十分で、戦略的な視点というものがどうしても必要となります。例えば、軍事的なリソースをどのような地域にどれぐらい投入するのか、あるいは食料をどのように輸送してタイムリーに必要な軍隊のもとに供給するのか、長期戦に備えてどのような準備をしておくのか等、細かな点に至るまで良く組織されることが戦略には含まれています。こうした長期的かつ複合的なマネジメントというものが戦略には求められており、それ無くして勝利は得られないのです。

日本人はこうした勝負に対してどこかポジティブなところがあるようです。例えばスポーツで言うと、サッカーワールドカップなどでは勝つことに対して根拠のないポジティブな意見がテレビでは盛んに発言されます。その時にはネガティブな発言することすら許されないような雰囲気が感じられ、日本人はいつも心のどこかで神風が吹くことを信じているのではないかと思えるほどです。

これに対して戦略的な視点とは常にネガティブなものです。よって神風が吹くというようなことを期待することはありません。例えば戦いにおいては、弾が足りなくなるのではないか、輸送が間に合わないのではないか、人員が足りないのではないか、夜暗くなってから攻撃をしかけられるのではないか等、ネガティブな要素は際限なくあらゆる場面に存在します。戦略とはこうしたネガティブな物事に対する見方がまず前提としてあって、そうしたネガティブ要素を無くしてゆくためにマネジメントを通して改善し、最適化することも含まれていると考えています。つまり必要以上に戦いに対する勝利へのポジティブな見方は、戦略という発想とはそもそも相容れないものなのです。

MBAで学ぶ戦略

MBAはジェネラル・マネジメントのための学習であり、ジェネラル・マネージャーを育成するためにプログラム全体が構成されています。先ほど戦争において軍事戦術、包囲戦、兵站学など複合的なものが戦略に含まれることを述べましたが、MBAのビジネス戦略においては販売、人事、会計など、様々なビジネス分野について理解し、それを戦略に落とし込むことがマネージャーには求められます。つまり戦略系の課目は単にひとつの課目であるという訳ではなく、MBAで学ぶ様々な課目を総合的に理解して、それを活用しながら全体をマネジメントする、あるいは全体を最適化するための手法を学ぶ課目なのです。

戦略というと、どうしても攻撃的な方法に目が向きがちですので、学生は新規性のある目先の変わった事業戦略を立ててしまいがちですが、これはどちらかと言うと戦術的なアプローチです。それに対して実際の戦略はあらゆるネガティブ要素を考えてそれを潰すという、どちらかというと守備的な要素が強いものとなります。よってマーケティング手法で優れたプランを出したとしても、ファイナンス的な視点がおろそかでは駄目ですし、人事的に優れたプランを出しても、売る商品自体がなければそもそも成り立ちません。こうして全体を俯瞰的に見ることが出来るように学ぶのがMBAの戦略授業なのです。

当校の戦略授業

当校の戦略授業の2課目は、日本のテキストではなく、英国Qualifiの指定する海外テキストに基づいて授業が行われており、先ほどから説明しているような戦略に対するMBA的な考え方をしっかりと身に付けるための授業が行われています。

日本的なMBAだと、どうしても戦略に対する視点が戦術寄りであるため、全体最適化を図るよりは、どこか特定のプランだけを取り上げて善し悪しが判断されるようなところがあります。しかし当校では、英国国立大学のアングリア・ラスキン大学のMBA学位取得のために、そうした偏った視点からではなく、全体を総合的に見て経営判断できるジェネラル・マネージャーの育成を目指した戦略授業が行われています。
このような国際的に通用するMBA戦略概念に沿ったスキルを身に付けたマネージャーになるためにも、ぜひ当校のMBAプログラムをお選び下さい。