このほど英国の高等教育情報誌「Times Higher Education(THE)」による2023年版の世界大学ランキングが発表され、Anglia Ruskin University(以降ARU)は昨年度と同じく世界301-350位にランキングされました。

※参照
「World University Rankings 2023」Times Higher Education

研究活動への評価は世界でもトップクラス

THEの世界大学ランキングは、世界90か国・地域の1600を超える大学を評価して、教育・研究・研究の引用(影響力)・産業収入・国際的展望の5分野の指標に基づいてランキング付けを行っています。このランキングにおいてARUは2017年から7年連続同ランキングを維持しています。

特に評価が高いのが 研究の引用(影響力)を示す「Citations」の項目で 、そのスコアは99.0(最高100)というハイスコアで、世界でもトップレベルの評価となっており、研究活動への国際的評価が非常に高いことを物語っています。また国際的展望「International Outlook」の分野でもスコア91.1という高評価を受けており、世界に開かれた学習環境を有していることが認められています。

そのほかの教育・研究・産業収入の各指標に関しても、おおむね年度ごとに右肩上がりに評価を高めてきており、今後更なるランキングアップも期待できる状況となっています。

日本の大学とのランキング比較

参考までに日本の大学のTHE世界大学ランキングにおける順位をご紹介します。以下は同ランキングの600位まで入った日本の大学をすべて示した表です。

ランキング大学名 ※()内は昨年度順位
39位東京大学(35)
68位京都大学(61)
201-250位東北大学(201ー250)
251-300位大阪大学(301ー350)
301-350位(ARU)名古屋大学(351ー400)、東京工業大学(301ー350)
501-600位北海道大学、九州大学、東京医科歯科大学、筑波大学(すべて501-600)
参照: 「World University Rankings 2023」Times Higher Education

ARUは名古屋大学と東京工業大学と同じランキング帯に位置しています。ARUよりも上位に位置する日本の大学は旧帝大の4大学(東京大学、京都大学、東北大学、大阪大学)しかありません。なお、600位以内の大学数は昨年度の12大学から2つ減らして10大学となっています。

また、600位までの大学のなかに、真に国際的に通用するといえる第三者認証・評価を受けたMBA学位を授与できる日本の大学は1つもありません。801-1000位にようやく世界三大認証機関の1つであるAACSBの認証を得ている慶応義塾大学がランクインしているという状況です。

総じて日本の大学のランキングは近年下落傾向が続いており、国際的なプレゼンスは下降傾向にあります。同じアジアでも中国(香港)の3大学(精華大学[16位]、北京大学[17位]、香港大学[31位])、シンガポールの2大学(NUS[19位]、南洋理工大学[36位])が東京大学[39位]の順位を上回っており、東京大学はアジアで6番目となっております(昨年はアジアで5番目)。200位以内の大学数を比べても中国(香港)が16大学ランクインしているのに対し、日本は東京大学と京都大学の2大学がランクインしているのみです。ちなみにお隣の韓国の200位以内の大学数は6大学で日本の3倍です。

日本の大学のランキング低下にはMBA教育の影響も?

当校のMBA top-upプログラムは『国境を越える高等教育』の3分類のうち、最も進歩的な「プログラムの移動」に分類される教育システムを取り入れて運営されています。

英国は特にこの「プログラムの移動」に積極的な国として知られ、世界中に自国の高等教育プログラムを輸出しています。香港では約1000、シンガポールでは約500以上の高等教育プログラムが世界中から輸入されていますが、それぞれ約半数が英国からのプログラムです。

そのほか、アジアや中東、欧州でも積極的に英国のプログラムを輸入しており、英国の高等教育機関は経営戦略の1つの柱としてプログラムの輸出に積極的に取り組んでいます。

THEの世界大学ランキングにおいて、ARUは国際的展望「International Outlook」の項目で高評価を得ていますが、まさに 日本の高等教育機関に足りないのがこの項目への対応ということができるかと思います。大学の国際化の必要性が叫ばれるようになって久しい日本ですが、制度的、あるいはスペック的な問題で遅々として進んでいないのが現状です。

日本のMBA学位やそれを取り巻く状況が世界的な基準から大きく逸脱したものであることは本ウェブサイトでも何度も触れてきました。この「ガラパゴス」ともいえる状態が続く限り、日本の高等教育機関の国際的なプレゼンスは下がり続けていく危険性があるといえるでしょう。