ジェネラル・マネージャーとなるために必要不可欠な要素が広く学べるMBA。そんなMBA学習にはほかの学問とは大きく異なる特徴があります。ここでは絶えず変化するビジネス環境で戦い続けるために必要なMBA学習における心構えや考え方について、そしてMBA学習によって得られるものは何かという点について詳しくご説明いたします。

MBAという学問

MBAとはビジネスを学ぶ学問であり、その中には戦略、人事、ファイナンス、マーケティングなどの種々の課目が含まれています。MBAとはこうした各課目を十分に理解して、これらを上手くマネジメントしながら総合的経営(General Management)を行うための手法を学ぶ学問です。つまりMBAは、各要素をまとめて経営するジェネラル・マネージャーには必要不可欠な学位であると言えます。

確かにMBAで学ぶことは経営において重要なことではありますが、そこで学んだ内容はマネジメントにおいて必ずしも生涯役立つものであるという訳ではありません。なぜならビジネスは技術革新や社会の価値観の変化に伴って流動的に常に変化しているからです。

一例を挙げると、インターネット前と、インターネット後ではビジネススタイルは大きく変化を遂げました。実際にかつてMBAのマーケティングでは「AIDMA」という消費者の購買行動プロセスを説明するモデルが金科玉条のように教えられていた時代がありました。しかし、もしいまだにこのAIDMAを後生大事にしてマーケティングを行おうとする教授や、ビジネスパーソンがいるとしたら噴飯ものでしかないでしょう。

インターネットの普及によって現在ではAISAS、AISCEAS、AIDCASなど新しい時代の消費者に求められるマーケティング手法が主流になり、既にAIDMAは時代遅れになってしまっているからです。かつてMBAのマーケティング授業では、このAIDMAが鉄板のセオリーとして必ず教えられていましたが、時代の変化と共に既に重要な手法ではなくなっています。

MBAは時代の先端を学ぶ学問ではない

時代は常に変化しています。その時代の先端の成功手法が徐々に浸透して一般化したものが、やがて教育として整えられ、それがやっと学問としてビジネススクールで教えられるようになるのです。つまりビジネスにおける社会に見られる事象と、それを教室で学問として学ぶまでの間には大きなタイムラグがあるということになります。よってMBAで教えられることは既に時代の先端からは遅れたものであり、MBAを学ぶ方は、MBAで教えられることはそのようなものであるということをしっかりと理解しておかなければなりません。

ではこうしたビジネスを取り巻く目まぐるしく変化する環境にあって、ジェネラル・マネージャーを目指すビジネスパーソンたちはどのようにMBAを学習すれば良いのでしょうか?

当校の事務局は、入校希望者から「〇〇の課目も学びたい」あるいは「学習のための授業時間数が足りてないのでは」という声を頂きます。こうした声からは、学問としてビジネスをもっと学びたいという意欲は感じられますが、先に述べたMBAがどのように学問化されるのかという過程を踏まえて考えると、少しズレた意見であるとも言えるのです。

MBAで学べる内容は時代と共に陳腐化してしまうものであり、それらをじっくりと時間をかけて学ぶことが、時代の先端で戦うビジネスパーソンに真に求められているものかというと、必ずしもそうとは言えないのではないでしょうか。

では、MBAで学ぶことの価値とは何なのでしょうか?それは「学び方を学ぶことである」と当校では考えています。

MBAは「学び方を学ぶ」学問

アフリカの発展途上国で水や食料が不足していた時代に、先進国は水や食料を供給するということを人道的な国際活動をして行っていました。しかし現在ではそうした物質的な支援以上に現地の人々に井戸を掘る技術を教えること、あるいは効果的な農業技術を教えて支援することに力を入れるよう変化しています。

ビジネススクールが学生に教えることはこれに似ているかもしれません。急速に時代が変化するなかで、そもそもビジネススクール(MBA)とはビジネスを学問として研究して教えるところではありません。前にも述べた通り、ビジネスにおける知識は時代とともに陳腐化しやすい一時的なものでしかないからです。

よってビジネススクールが学生に教えるのは、もちろんビジネスの手法そのものではありますが、それ以上にビジネスにおける「学び方を教える」ということが重要視されるべきだと我々は考えています。

よって学生の側がMBAを通して学ばなければならないことは、ビジネスにおける知識以上に、「どこからビジネスに必要な情報リソースを得ることが出来るのか」「どのような手法でそうしたリソースを分析してビジネスに活かせるのか」「過去のビジネス手法と現在のビジネス手法の変化から、どこに新規性を見出せるのか」といった答えを導き出すためのプロセスの方だと言うことができるでしょう。

これは別の観点から言えば、ビジネスの学習には終わりがないことをも意味します。基本的にビジネスの第一線で活躍したいと考える人であれば、生涯に亘って学習し続けなければならないのです。

実はこれこそがMBA学習の本質であり、学生がMBAで学んだことを最大化するためには「学び方を学び、継続的に学び続けること」が必要不可欠になるのです。

MBAを取ったらMBA的思考から抜けるべき

当校のディレクターである喜多元宏は「MBAを取ったらMBA的思考から早く抜けだせ」と言います。これは先に説明したようにMBAがどのような種類の学問であるのかを間接的に明らかにした表現です。

MBAで学んだ知識は、学んだその時から(あるいは学んでいる時には既に)陳腐化しています。いつまでもそれにしがみついて自身のビジネス知識やビジネススキルをアップデートしないMBAホルダーは、企業にとっては無用の長物でしかありません。

しかし、正しく「学び方を学んだ」MBAホルダーは、経営者として継続して学び続けて、時代に即したビジネス的な手法を身に付けていることでしょう。そういう意味でも、MBAホルダーは、MBAを取ったら自分の学んだMBA的な思考や手法から離れて、絶えずアップデートし続けなければならないのです。

またこの言葉には別の側面もあります。例えば外資系の大手企業であればMBAを学んだ社員が管理職者を占めることになります。こうしたMBA的な手法に染まった管理職者は、どうしてもMBA的な手法から離れることが出来ず、経営的な判断をMBA的なセオリーだけに基づいて行ってしまうことになります。

こうした管理職者が増えてゆくと、どのようなことが起こるかと言いますと、どこの企業や業界でも同じような、代わり映えのしないビジネスプランや戦略しか見られないようになります。使い古された陳腐なフレームワークで作り出された戦略は必然的に似たり寄ったりのものとなり、抜きんでたビジネスを生み出す可能性を減らしてしまいます。

先にAIDMAという時代遅れと化したマーケティング手法を取り上げましたが、現在ビジネスの現場使われていて、またビジネススクールでも学ばれているような多くのフレームワークも、近い将来に同じようなものになることは確実でしょう。

こうしたMBA的学習の反省点から、イノベーションやブルーオーシャン戦略といった概念が生まれ、アントレプレナーシップに力を入れるビジネススクールが世界的に増えてきました。これらは正にMBAのセオリーから抜けるためのアプローチであり、こうした傾向が見られるようになっていることもまた、MBA取得を考えている方は知っておく必要があるでしょう。

当校のMBA取得プログラム

当校のプログラムの第一ステップであるPGD課程は、全8課目で構成されています。これらの課目はいずれもMBA学習のコアとなるものであり、こうした課目を学ぶことで学生各自がそれにさらに敷衍して学ぶことが出来るように設計されています。

先に入校希望者の問い合わせで「〇〇の課目も学びたい」あるいは「学習のための授業時間数が足りてないのでは」という声があると言いましたが、実際にこうしたコアとなる課目を学ぶだけで、MBAで学ぶべき学習範囲は十分に網羅されています。また学習時間については、ビジネススクールとは「学び方を学ぶ」場所であり、学生が加えてさらに学習しようとすれば、無限に学ぶことが出来るように設計されています。

こうした声を入校前の希望者から頂くことはあるものの、入校後の学生から頂いたことは今まで一度もありません。むしろ8課目でも多いとか、仕事と学習を両立させるのが大変であるという声の方を良く頂きます。

当校のプログラムは、仕事をしながら短期間かつ効率的にMBA学位取得するためのものとなっています。もし皆さんがMBA学習の本質がどのようなものであるのかをこのコラムを通してお知りになられたのであれば、ぜひ当校の諸要素(期間、費用、学習内容、学位の質)を他校と比較して検討するようにして下さい。

MBAを学ぶことの価値は、当然ながら学位を取得することそのものにありますが、同時に「学び方を学ぶこと」でもあることを忘れないでください。

ビジネススクールを選ぶ判断基準は人によって様々ですが、授業料という投資に対して十分なリターンがあるスクールであるか否かも基準に含めて選ばれることをお勧めいたします。なぜならば「学ぶことを学ぶ」という機会は、学位があなたの生涯に亘って価値を付与するのと同じくらい、あなたにとって有用なものとなるはずだからです。